- 作者: 川端裕人
- 出版社/メーカー: 時事通信社
- 発売日: 1997/08
- メディア: 単行本
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イルカ裁判再び!なのかで少しだけイルカ虐殺について調べた時にイルカを巡る議論が気になったので読んでみた。
著者は川端裕人さんでブログも書かれているようです。いくつか川端さんがコメントしていたエントリを読みましたが非常に真摯な対応をされる方だと思いました。もちろん本書でもそれは伝わって来るのでこれは読んで良かったと思いました。タイトルが示すとおりイルカと人間は微妙な関係であることがわかるし、何よりも他のあらゆる問題に対する議論のすれ違いについて考えさせられた。
世の中で問題となっている事象はどれも複雑に絡み合っていて一筋縄ではいかない事ばかりだ。だから議論が必要になる。しかし議論は時として空転する。言いたい事を言うだけの人たちやディベートという言葉を誤解している人たちを除外したとしても論点がズレてしまう事があるからだ。
例えばイルカを捕殺している人とそれに反対する人との間では、すぐに思いつくだけでもまず以下の2点を双方に考えて欲しいところ。
その捕殺は本当に必要なのか?また必要だったとして過剰ではないのか?
これはイルカ捕殺肯定側の話。生活の為に致し方ないと言われると何も言えなくなってしまいがちだがイルカ裁判のデクスターが言うようにタコが自分の足を食っている(捕殺しまくって絶滅させてしまうと結局生活に困る)だけの可能性もあるのではないか?
他国で牛が殺され食べられている事をインド人が止めないのは何故か?
牛が神聖な生き物とされて食べる事がタブーとされている文化があるけれど彼らは他国に出かけて「牛を殺さないで!」と言ったりしない。イルカだけを特別視することは知能差別などの問題もはらんでいるのではないか?
このあたりについても本書で触れられているので興味がある人は読んで欲しいと思うけれど前提となるべき上記2点についてだけでもお互いが確認出来ていないと議論の空転率は高まるわけで議論の前に前提条件を埋める行為が大切だと思いました。
それにしてもイルカって不思議な生き物だと思った。カルト宗教団体がいくらでも利用出来そうな存在でもある気がする。種の絶滅に対するスタンスもどうしたものかと思った。絶滅もまた運命と受け止める考え方もあるだろう。自分はあらゆる物事を長い目で目安として100年単位で考える事が大切だと思っているのですがそれは目先の利益に囚われない為として有益なだけだ。101年後に対するケアはそこにない。環境問題が声だかに叫ばれる昨今、あらためて「どう生きるか?」を考えさせられる1冊でした。