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ターナー賞の歩み展

レビュー

仕事で六本木行ったついでに美術館へ足を運んでみた。六本木ヒルズ森タワーの53階で現在開催中なのはターナー賞の歩み展。ちなみにスカイデッキもシティビューもターナー展も同じ1500円のチケットで全て見られる。スカイデッキを観に来た人は一緒に観ると良いんじゃないかな。写真は撮ってないのでスカイデッキの写真が見たい人はzaikabouさんトコで見られます。写真にチラッと写ってるもののターナー賞の歩み展そのものは思いっきりスルーされてますけども。

六本木で美術館となると絵画を優雅な気持ちで眺めるイメージだったんですがターナー賞を舐めるなって感じでした。受賞者みんなトンガリ過ぎ。美術館というより博物館な感じかなあ。

見所はやはりデミアン・ハーストの「母と子、分断されて」だろう。真ん中で2つに切断された牛の親子をホルマリン漬けにした作品が並んでいる。

初めて見たら衝撃なのかもしれんけど10年近く前に人体の輪切り見ちゃってるからそうでもなかった。右半身と左半身の間に入って牛タンとか肩ロースとか呟きながら見てた。

優雅に絵画鑑賞するつもりだったから面食らったけど面白い作品は他にもいくつかあった。女子のワキをアップにした写真だったり母乳を乳首からぴゅー!って飛ばしてる写真だったりチンコを生やしたフリフリのドレス着た少女がカツアゲしてる絵の描かれた壷だったりアートと言えばなんでもアリだと思ってんだろキサマらって言いたいぐらいステキだった。「電気がついたり消えたり」って作品なんてホントに5秒間隔で照明が点いたり消えたりするだけだかんね。こんなん夏休みの課題として提出したら美術教師に石膏で固められて東京湾行きだよまったく。

映像作品もそんなに面白くないものの*1いくつかあった。映画「ジキル博士とハイド氏」の映像を通常とネガポジ反転を二つの画面に映して善と悪の間で苦悩する人間の姿を描くとか言っちゃってる「正当化された罪人の告白」は俳優の顔が素で怖かった。ネガポジ反転された方がマシなぐらい怖かった。

「60分間の沈黙」は、警官の一団を整列させ、60分間話すことも動くことも禁じて静止する姿をただ記録しただけのもの。咳をしたり、かすかに動いたりしながら、60分間が過ぎたとき、この作品のクライマックスが訪れる。何が起きるか、あなたもスクリーンの前で60分間静止して待つことだ。

うわあ!待ってられなかったー!くそう!どんなオチがあったんだろう!

スティーヴマックイーンの作品は大脱走か!と思ってみたら同姓同名の別人だった。

丸太でつくられた家屋を背景に、白いシャツにジーンズを身に付け、ブーツを履いたマックィーン自身が直立している場面から展開される。そして、背景となった家屋の前面の壁がゆっくりと、重量感たっぷりに作家めがけて倒れてくるのだが、その瞬間、ほぼ正方形に開けられた窓枠が作家の身体をそのまま通過することによって、壁面が地面に衝突した衝撃による瞬間舞い上がる粉塵にまみれながらも作家自身は微動だにせず、そのままの場所に立ち続けるのだ。この一回的なシークエンスが、モノクロの画面であらゆる角度から映写され、何度も反復される。

別人だけどこれはこれで見たことある映像だった。パクリ映像が日本でも撮られてた気がする。

レイチェルホワイトリードの「ハウス」はヴィクトリア朝ハウスの内部空間全体をコンクリートで型取りして作品としたものらしいけど現物が無い為に写真が数枚貼られてるだけなのですげーわかりにくい。言われてもう一度見てああそういう作品なのかこれはって感じ。

一番良かった映像作品はサスキアオルドウォーバース。

例えば「キロワット・ダイナスティー」という作品は、中国で現在進行している大規模なダムの建設工事が元になっています。このダム建設はその是非を巡り国際的な議論を巻き起こしていて、延べ540万人もの住民が住んでいた土地を追われるそうです。

「プラシーボ」(偽薬)という作品は、18年もの間自分が優秀な医者であり、WHO(世界保健機関)の研究員だと偽って家族を騙し続け、嘘がばれそうになると家族を殺害してしまった実在の男をモデルにしています。このように物語の裏に事実が隠されているからこそ、サスキアの作り出す映像が奇妙な世界なのにどこかリアリティを感じるのでしょうか。

こんな背景があるとは知らなかったけど無くてもすげえってなった。水の中に水よりも粘性の高い液体を流した映像にゆったりとしたナレーションでストーリーが語られていくので不思議な感覚になる。映像も良いけどストーリー自体が良い。ちょっとこの人は要チェックだ。

映像作品以外はコチラで一部が見られます。

*1:たぶん古いから