月収53万未満なのに高額療養費の上位所得者に該当するケース

目次

月収53万だと高額療養費制度の上限が倍になる

以前に↓こんなエントリを書きました。あくまで高所得者の話なので一般人には関係ない話ですねー、って感じだった。

legnum.hatenadiary.com

月収53万「未満」なのに高額療養費の上限が倍?

が、知人の中に「月8万超えたのに高額療養費で補填されなかった!月収53万も貰ってないのに!」と言う人がいたので補足しておきます。基準となるのは月収ではなく標準報酬月額だって部分がポイントです。前回のエントリで月収と言い換えちゃってたのでおれもわかってなかったですが!とは言え大半の人は同じぐらいになるのであながち間違ってない。問題となるのは次の人。

賞与が年4回以上の人は注意

年3回以下支給の賞与などは標準報酬月額の対象とはならず、標準賞与額として、賞与の保険料の対象となります。 しかし、年4回以上の賞与などが支給される場合は標準報酬月額の対象となり、報酬月額の計算にその月割額を算入します。


賞与等が支払われたとき | [ITS]関東ITソフトウェア健康保険組合

普通は賞与を標準賞与額という標準報酬月額とは別枠で計算するところ、年4回以上だと同じ枠で計算するようになると。お気づきでしょうか。そうです。その知人は年4回かそれ以上の賞与を受け取っていたのです。4回以上も!!セレブめ!おごれ!!!!おごってください!!!!!

このケースだと賞与が標準報酬月額に含まれるので「月収が53万を超えていないのに標準報酬月額が53万を超える」という事が起こります。前回も書いたけど標準報酬月額が増えると月々の社会保険料の支払いも増えて手取りが減ります。4,5,6月の残業は控えめに、って聞いた事ある人いると思うけどそれは社会保険料節約の術。

となると次に出て来る疑問はこれ。

みんなが節約してる部分を何故増やすの?

例えば「総額据え置きで年2回にしろ!」とかね。まあそう思うよね。年4回支給の意味は会社ごとにそれぞれ理由があるのかもしれないけど大きな理由としては労使ともに節約になるケースが存在するからです。

普通の人は標準報酬月額に賞与は含まれてないけど別枠(標準賞与額)で計算されてやっぱり社保料を取られてる。昔は賞与から天引きされるのって所得税だけだったから月収を抑えて賞与でガツンと貰った方が手取りは多かったはずだけど今は賞与からも同じ利率で社会保険料が引かれる。じゃあ月給と賞与どっちで貰っても同じ?と思いきや違うんです。

標準報酬月額と標準賞与額は上限が異なる

わかりにくいんだけどまず年金と健康保険で等級・上限に違いがあって、月給と賞与でも違いがあります。今回の話だと前者の違いはどうでもいいかも。

  • 年金

現在の標準報酬月額は、1等級(9万8千円)から30等級(62万円)までの30等級に分かれています。

http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=1971

  • 健康保険

標準報酬月額は、健康保険は第1級の5万8千円から第47級の121万円までの全47等級に区分されています。

標準報酬月額・標準賞与額とは? | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

年金は62万、健康保険は121万を超えたら後はどこまで増えても同じ額が天引きされる。一方で賞与はどうなってるかと言うと等級がなく上限だけが決まっています。

  • 年金

標準賞与額とは、実際の税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てたもので、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となります。

http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=1971

  • 健康保険

賞与から千円未満を切り捨てた標準賞与額(健康保険は年度の累計額540万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限)

標準報酬月額・標準賞与額とは? | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

上限の違いが上限を超える人たちに恩恵をもたらす

上限を超えるなら低い額で保険料率が固定される方に出来るだけお金を寄せた方がお得。共働きなら医療費控除は世帯の中で一番稼いでる人に付けた方がお得ってのと似た仕組み。

賞与の社会保険料は540万を超えない限りはどんどん上がっていくけど月額の社会保険料は62万(と121万)で頭打ちになるから62万を超える人たちは月額を多くした方が年間トータルで見たらかなりお得って事。ちょっと古くて保険料率が現在と違ってるけど以下に試算がありました。結構な節約になってる。

この社員の場合、賞与180万円(年2回)を年12回で除すると、給与扱い分が30万円増え、90万円となります。この際、厚生年金保険の標準報酬月額の上限額は62万円なので、この金額を超えた28万円については、厚生年金保険の保険料が徴収されません。結果として、社会保険料は労使合計で年間約213万円に抑えられ、約51万円の節保険料となります。


第14回 賞与を年4回以上支給すると大きな効果 | 保険サービスシステム<公式>

賞与年4回で恩恵を受ける対象って?

これは簡単な話で賞与を含めた標準報酬月額が62万以上になる人です。年収750万ぐらい。

賞与年4回で節約してる企業って?

これも簡単な話で社員に年収750万超が多い企業だと思う。社会保険料は労使折半なので社員側の負担が減るだけじゃなく会社側の負担も減ってWin-Winです。年収が多ければ多いほど節約となる金額も増えるので確認してないけどこういうとこに多そう。

じゃあ知人は年収750万超なの?

そうとは限りません。あくまで得する層が年収750万超ってだけで上層部の恩恵の為に大半の社員が不利益を被る図式とか普通にあるし今回まさにそれだった切ない。

恩恵ない上に補填されないってひどくない?

今回は高額療養費に限定した話なので損した形になるけどそれ以外は年3回以下と変わらないので高額療養費の対象にならないよう健康体を維持するか今より頑張って恩恵受けるレベルまで稼ぎましょう!

標準報酬月額って低い方がいいの?

一概には言えません。傷病手当金とか増えるよ!ふえるよ!
病気やケガで会社を休んだとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
あと厚生年金の払い込み額も増えるから将来もらえる年金が増えるかも。もちろん同額を会社に負担させてるのでその威力は倍です!

4,5,6月は残業を減らせ、って話も健康体の人が大半だから成立してるだけで高額療養費とか傷病手当金とかでお世話になる機会が多い人はむしろ残業時間を増やした方がお得なのかも。