結構前から思っていたことなんだけれど医療費がタダって本当に良い事なのか。例えば東京都23区内だと未就学児(小学校入学前まで)は医療費がかからない*1。参考例を挙げてみると
乳幼児(6歳に達する日以後最初の3月31日まで)が健康保険証を使って医療機関で診療を受けた場合、その窓口で支払う“医療費の自己負担分”及び“入院時の食事療養費”を助成する制度です。平成19年10月から対象を「15歳に達する日以後最初の3月31日までの児童」に拡大する予定です。
という事なので新宿区に至っては平成19年10月から15歳まで拡大するみたいですね。いまこそ必要なたしかな野党が頑張った結果らしいのですが別の党を支持してる人たちからもこの点に関しては異論が無いようでして。
で、コレって本当に必要なの?って話。
確かに育児にはお金がかかるから少子化対策としても有効だ、という意見に対して真っ向から否定出来ないです。だからと言って諸手を挙げて賛成しとけばいいのかっていうと少し疑問。生命保険に対して神話崩壊的な話は良く聞くけれど未就学児医療費についての問題点は見かけない*2。パッと見ではすごく良いシステムに感じる。が、ちょっと考えて問題点を探してみた。
無料だからとりあえず病院へという考えに陥りやすくは無いのか?
一時期さかんに騒がれていた老人の医療費無料による病院待合室の井戸端会議化。特にドコが悪いって事も無いけれど無料だし近所のジーサンバーサンも来てる事だし通っておこうかってアレ。これって子供でも当てはまるんじゃないのか。もちろん井戸端会議は開催されないだろう。でも大したことは無さそうだけど無料だから行かなきゃ損みたいな感覚になっている親が多いのではないか。→子どもに関してはただの風邪程度で病院連れてってインフルエンザ貰って大変!みたいな状況になる方が怖いからそれはない、と多数の親御さんから意見もらいました。なるほど。
薬漬けの子供が増えるのではないか?
無料だからと言って病院に通う。放っておいても治る風邪だけれど無料だから薬も受け取る。これって最近まで問題視してなかったんですけど実は問題なんじゃないかと。自分は病院に行く事が滅多に無いので市販の風邪薬でも充分効果があるんですけれど同僚は市販の風邪薬ではまったく効果が無い。どこまでホントかわかりませんが「自分はしょっちゅう医者に診てもらっていて薬も強めなものを使用しているから市販のじゃダメだ」と言っている。裏を取っていないので真偽は定かじゃありません。でも抗生物質の歴史がイタチゴッコだと考えるとその可能性も否定出来ない。
医療費無料より負担した方がトータルでコストが低いのではないか?
自己負担だったら通院しないけれど無料なので通院する、というケースがどのぐらいあるのかにもよりますが自己負担なら通院しないのであればそもそも不要な医療費が計上されているという事ですよね。意外と計算してみたら自己負担制にした方が年間コストは低かったりと思わないでもない。
そもそも医療費のような「何かあった時の為の蓄え」は自主的にストックすべきではないのか?
医療保険を掛けておけとは言わないけれど何が起こるかわからないなら予めストックしておくべきではないのか。もっとも医療費無料でプールした予算を該当家庭に還元したところで大半の家庭がストックしておかないだろうとは思う。でもそこまで考慮される事って相当バカにされてますよね。どうせお前ら使っちまうんだろ、って見方をされてこの制度が導入されてたり。
ざっと思い浮かんだ事を列挙しただけなんで根本的に大切な事を見落としてるかもしれない。とは言え調べに調べてたらいつまで経っても書けないんでもう書いちゃいます。目に止まった方で思うところのある人は色々と教えて欲しいなあ、なんて。
このエントリは
イキナリ私の答えを言っちゃうと、1)コストをかける、2)アクセス制限、3)医療の質をあきらめるのうち、どれか好きなのを選んでくれ、ということになる。局地的には4)無駄を省いて工夫でなんとかする、という答えもあるかもしれない。
を読んでから思い立ったので書きました。
追記 ああ、そうだった。上記引用の外来の待ち時間を減らす方法ってエントリを読んだのに
不要な患者が通院する事による医師負担増大
ってのが抜けてました。そして関連エントリを追加しておきます。
何だか医療という分野にだけ突出して手厚い感もなくはない。もちろん、重病・重傷の子を抱える家庭の負担を救済するという趣旨は理解できるが、医者にかかること全般となるともっと軽い、カゼとかケガもタダになるのだ。何もそこまで、と思うし、そこまでするくらいならもっと他のことにとも思う。
いわゆる「医療崩壊」現象が進行する要因の一つとして、医師の過重労働が挙げられるが、それはざっくり言うと医者が来てほしくないのに患者が来るということだ。普通にさばいていたのではさばき切れないくらい大量の患者が受診するから、医師の労働量が想定以上に増大する。特に高齢者医療や小児医療では、行政は価格を下げようとするばかりで、受診しやすくなる方向にしか改革をしていない。医療費を抑制する以上は勤務医を増やすことは難しいから、患者の増大はそのまま労働量の増大になってしまう。