インシテミル

インシテミル

インシテミル

どっかで内容を聞いて読みたいと思ってたんですがすっかり忘れてて読み始めて驚いた。表紙おかしいだろこれ!この表紙で凄惨な死体描写があるとは思わないっつの。建物の見取り図が載ってるんだけどそして誰もいなくなった (ハヤカワ・ミステリ 196)とか綾辻行人十角館の殺人 (講談社文庫)を連想した。

内容はというと面白かったです。人文科学的な実験を行う為に時給1120百円という高給で集められたモニターたち12人が過ごす7日間(112,000円×24時間×7日)なんだけどボーナスやペナルティがあって報酬は上限する可能性がある。高給すなわちリスクって事で誰かを殺すと2倍とかそういうルールがいくつかあります。
ここで映画のes[エス] [DVD]を想像して怖くなる。「お互いおとなしく7日間過ごして大金せしめようぜ!」なんて約束したところで主催者がそんな流れを受け入れるわけねーよって事であっさり第一の犠牲者が発生しちゃう。

ちょっと話がそれるけど映画esでも思った事を書く。単に1週間とか2週間拘束されるだけで高給が約束されるってオイシイよね。例えばesでは看守役と囚人役に別れて過ごすってだけなんだけどさ。どんな状況になろうともあくまで実験だってスタンスを貫けばローリスクハイリターンなわけだけど平時以外の状況下でスタンス貫ける人って少ないと思うんだよね。ましてや高給って響きに釣られてノコノコやって来た奴らにそんな強い精神持った奴いないだろっていう。となると相当なリスクを伴う事は明白なわけなので似たようなモニター募集がかかっても決して参加しないぞと誓うのでありました。ちなみにesは実際の事件(スタンフォード監獄実験)を元にした作品なので丸っきり創作*1ってわけじゃなくこの手の実験はやはり何が起こるかわからないと捉えるべきだよなあ。

でも小説ならいいよね!主人公が俺みたいなこと言ってたらプロローグで終わっちゃうからね!実験なのでよくあるクローズドサークル物とは条件が異なるというか順序が逆になるのが面白い。だけどこれを突き詰めるとトリックを成立させる為に条件を好きなだけ操作出来るって事でちょっと興醒めかもしれない。時給がハンパな額なのもそのせいか?とか勘繰ってしまう。

余計な事ばっか書いたけどルールを見たら興味出るんじゃないかなって事でルールブック*2を引用しておきます。

(1)人を一人殺害した者は、「犯人ボーナス」として、報酬総額を二倍とする。このボーナスは累積する
(2)殺害された者は、「被害者ボーナス」として、報酬総額を一・二倍とする。このボーナスは累積しない
(3)殺害一件について、正しい犯人を指摘した者は、「探偵ボーナス」として報酬総額を三倍とする。このボーナスは累積する
(4)犯人を指摘せんと試みる者は、調査に役立った者一名を指名することができる。指名された者は「助手ボーナス」として、報酬総額を一・五倍する。このボーナスは累積しない
(5)犯人を指摘する試みに際し、証言を取り上げられた者は、その発言一件につき「証言者ボーナス」十万円を得る

何もしなくても7日間拘束されるだけで1800万円超だけど仮に3人殺したら1億5000万だからその人の状況次第じゃいくらでも殺しまくるかもしれないよなあ。

*1:映画だと虐待されるのは囚人だけでなく実験者側の女性がレイプされたり過剰な演出があるけど

*2:ここではルールブックの穴も指摘されてて俺も気になった点がいくつかある。気になる人は気になって仕方ないんじゃないかと思うレベルの穴