キュア

キュア cure

キュア cure

ランディは阪神の方と同様にあんまり読んだ記憶がない。これは癌と戦う外科医の話。と言ってもただの外科医じゃなくてサイキックな人。本人にその自覚はないので単に手術が得意な外科医となっている。

何か特定の分野において飛びぬけた能力を持つ人は努力の賜物であるんだろうけどそれとは別の何か特性みたいなものがあるような気はしてる。例えばこの外科医は癌の位置が感覚でわかる。勘がいいと言ってしまえばそれだけなんだけどそうじゃない何かがあるんじゃないかな。だから自分の特性がどの職業に向いているかを探すことは良いことだと思う。一方でそれを理由にいつまでも漠然と転職を繰り返し続ける人もいるわけでそういう人は探す事自体が自分に向いていないので多少の違和感があっても与えられた仕事という枠に無理やりハマっておいた方が幸せなんじゃないかとも思う。

それにしてもガンは怖い。寿命がわからないから今を生きる事が可能なわけで期限を提示されてしまうと異様にあせるだろうなあと。そう思う反面、決められた期間だけ頑張れば良いのだと思うとそれはそれで有益な気もしてくる。無期限の仕事っていまいち身が入らないしさ。作品中で「末期ガンと宣告された人の周囲の扱いが変わる。末期ガンの人とそうでない人の生存年数はどちらが多いのかはわからないのに」みたいな事が書かれているんだけど確かに一理ある。ある患者に末期ガンを宣告した医者が翌日に交通事故で死ぬかもしれないのだ。他にも45億年からすると人の一生なんてちっぽけなのに何故ガン患者は延命するのか?みたいな事も書かれてる。お前の人生をたかだか4,5年延長したところで何が変わるのだ?と問われてる気がした。

それから他人に頼る事を異様に嫌うベンチャー企業の若手社長が出てくるんだけど彼のその性格を決定付けた乳児期のシーンに打ちのめされた。母親は赤ちゃんに哺乳瓶でミルクを与えるが泣いてばかりでまったく飲まない。むしろ嫌がるぐらい。おなかはすいてない?でもおしめは取り替えたばかり。原因は哺乳瓶の吸い口が彼にとってほんの少し小さかっただけ。しかし彼は伝えられない。母親も気づけない。

お互いが意思疎通したいのに出来なくて悲しいすれ違いになる展開が大嫌いというか非常にやるせなくなるので読んでて泣きそうになった。数年前に1歳11ヶ月の男の子が餓死した事件があったのだけれどその時も似たような息苦しさを感じた。母親がトイレで倒れて亡くなっていたのだ。防ぎようがなくはないけれど完全に防ぐ方法はこれからも無いだろう。とても切なくなった。これも俺が過去に体験した何かが原因なんだろうかとかいろいろ考えてしまって苦しかった。

怠惰な日常を送っている人が読むと少し頑張れる気はするのだけれど俺みたく余計なことまでウダウダ考えちゃう人にはオススメしません。